日立製作所の技能実習生の解雇報道に感じる違和感
今年の9〜10月にかけて、日立製作所が同社笠戸事業所(山口県下松市)において、フィリピン人技能実習生40人を実習途中で解雇して話題になったことは皆さんもご存知かと思います。
https://www.asahi.com/amp/articles/ASLBS6KHBLBSULFA02Z.html
この記事を見て、私はとても違和感を覚えました。
解雇の理由は、事業者側、つまり日立が実習生に目的の技能が学べない作業をさせている疑いがあり、技能実習制度を所管する法務省や国の監督機関「外国人技能実習機構」の検査を受け、そこで違法と判断されたとのこと。
このため技能実習ビザを、就労不可の短期滞在ビザに変更せざるを得ず、雇用者側の責任として、実習生を解雇したようです。
解雇にあたり、予定していた3年間の勤務期間のうち、残り2年間分の基本賃金を日立が実習生に補償することで合意しているとのこと。
一見もっともらしいニュースに感じますが、この技能実習制度自体、建前は海外への技能移転、本音は国内産業の人手不足の補填、という構造になっているのは既に明らかです。
つまり、技能の移転という建前上の趣旨は、ほぼ守られていないのが実情と思います。
日本政府も、この制度の不具合は当然自覚しながら、運用しているものと思われます。
上の記事でも、日立製作所の中西会長は、「違法性はないと信じている」とのコメントを出しているのは、当然かと思います。
もしも違法性を認めたら、ほかの技能実習生を使う雇用者はどうなんだ? みんな違反しているだろう?
ということに発展しかねませんからね。
恐らくこんな理由を正論として取り締まり始めたら、大半の技能実習生が、技能移転にそぐわない作業をしていると判断されるでしょう。
それでは現在の技能実習制度自体が成り立たなくなります。
なので、私はこのニュースを素直に受け取れるかというと、受け取れません。
何か報道できない事情が絡んでいるのではないかと感じてしまいます。