日本に暮らし働く外国人や政策に関する書籍をいくつかご紹介します。

コンビニ外国人

【著者】芹澤健介
【発行所】新潮社

私たちに一番身近なコンビニで働く外国人への取材を切り口として、日本で働く外国人労働者が抱える問題点を洗い出している。

現在全国各地のコンビニで働く外国人はその多くが「留学生」として在留許可を得て就労しているが、そこには「出稼ぎ」を目的として入国する留学生と、入国前にその留学をあっせんする現地ブローカー、また留学生本人やあっせんブローカーから収入を得る日本語学校などが形成する「留学ビジネス」が歴然と存在する。

現状のままでは、2020年東京五輪後、経済が衰退する日本へ、逆に成長し続ける東南アジアからやってくる労働者は減っていくのではないかと指摘する。

増加する、コンビニで働く外国人やその他外国人労働者の隠れた実態を知ることができるだろう。

新・生産性立国論

【著者】デービッド・アトキンソン
【発行所】東洋経済新報社

イギリス出身で、現在小西美術工藝社の社長を務めるデービッド・アトキンソン氏が34年間の日本経済の研究に基づく分析から、今後の日本経済・政策のありかたを提言する。外国人ならではの冷静な分析により、日本の高度成長は日本が特別だったからではなく、日本の人口激増がもたらしたものであり、既に始まった人口減少時代では、「生産性」を上げることに徹底すべきだと考える。それを行うためには、女性の活躍は必須であり、生産性を上げられない企業や経営者は淘汰されるべきで、今後深刻な状況になるといわれる労働力不足は、望むと望まざるにかかわらず生産性革命を引き起こすだろうとしている。

ただし、現在話題に上る、政府による安易な外国人労働者の受け入れについては、生産性革命を阻害する要因であり危険な政策だと述べている。

最近巷では「生産性向上」の言葉があふれているが、本書ではその定義がしっかりされているので、理解しやすいと思う。

新移民時代

【著者】西日本新聞社

【発行所】明石書店

近年、留学生や技能実習生という形で外国人労働者が急増している九州での綿密な取材をもとに、西日本新聞取材班が彼ら外国人労働者の実態を暴き、移民がいるのにいないふりをする日本の国策に対して警鐘を鳴らす。

移民を「生活者」として見ずにただの「労働力」としてしか見ない日本の移民政策によって、既に数多くの外国人が流入しているが、教育問題をはじめとする受け入れ態勢は整備されていない現状について、まず「現状を知る」こと、そして有識者の意見を交えながら色々な問題提起をしている。

本書では、現在日本で働く外国人労働者について、特に「留学生ビジネス」や「技能実習生」を中心とした報告によって、その現実を知ることができるだろう。そして彼らと共生していくためには日本人・日本社会がどうあるべきか、について考えるきっかけを与えてくれる。

外国人実習生SNS相談室より

【著者】榑松佐一
【発行所】風媒社

「愛知県労働組合総連合」で議長を務める筆者が、SNS(FacebookやLine)によって主に東海地方に住む技能実習生からの相談活動を行い、その中で明るみに出た技能実習生の実態について、SNSでのやりとりを含めて詳細を記録している。

現在、日本に来る技能実習生はベトナムなど東南アジアから来る人が多いが、日本語でのコミュニケーション能力が不十分な彼らにとってはSNSが命綱であるとも言え、SNSの「相談室」を利用することで実際に現地の通訳なども交えて短時間での問題解決が可能な状況にはなっているようだ。

ただし現在も脈々と続く「技能実習制度」には闇の部分が多く、制度的な欠陥があると指摘する。また法務省(入国管理局)の人権感覚の欠如が根本的な問題であるとも指摘する。

SNSを利用した技能実習生からの相談、そして解決に向けた対応について、投稿原文の記載などによって現場の最前線を生々しく知ることができるだろう。

外国人労働者をどう受け入れるか

【著者】NHK取材班 (執筆者:板垣淑子、小林竜夫)
【発行所】NHK出版

外国人労働者をどう受け入れるか

技能実習制度をはじめとする現在の日本の外国人労働者受け入れ制度は、主に東南アジアから、「ジャパニーズドリーム」を抱いてやって来る労働者の夢を叶えるどころか、打ち砕かれて、失踪したり不法在留して日本社会で最底辺の生活を余儀なくされる実態を実例の取材で明らかにしている。

もちろんこのような人は一部のみだと信じたいが、今の日本の外国人労働者受け入れ政策を見直さない限り、近いうち外国人から見放され、その結果苦しむのは日本人自身だ。何とかしなければ手遅れになる、と警鐘を鳴らす。

限界国家

【著者】毛受敏浩
【発行所】朝日新聞出版

既に人口減少が着実に進み始めている日本には、「移民の受け入れが必要だ」という立場にたち、移民を今のように裏方(バックドア)から受け入れるのではなくちゃんと正面から受け入れるべきだと指摘する。

海外の移民受け入れ事例を紹介し、これから多くの移民を受け入れるために必要な「多文化共生プラン」を提言している。生活者としての移民を受け入れるにあたって、少しずつ、親日的な国から、人材基準を設定したうえで受け入れるべきとしている。

また人間は平等と考える日本人の思想、外からの文化流入に寛容的な日本の文化からも、日本は移民受け入れに成功する素質があるとしている。

本書では、日本社会の衰退を防ぐために、政策面で外国人移民をどのように受け入れるべきか、について学ぶことができる。

移民受け入れ大国日本の末路

【著者】三橋貴明
【発行所】徳間書店

現在、欧州、米国はじめ各国で起こり始めている移民引き締め政策や移民問題に触れ、「移民受け入れ」「国民の自由」「安全な国家」の3つを両立することはできない(移民政策のトリレンマ)と述べている。つまり、移民を受け入れることで安全を犠牲にしたヨーロッパや、国民の自由を犠牲にしたシンガポールのようになるべきではないとしている。

また、少子高齢化により今後深刻な人手不足を迎える日本は、生産性の向上によって実質賃金の上昇をもたらし、経済成長を引き起こす絶好のチャンスであり、「移民の受け入れ」はその機会をつぶすことになると指摘する。

本書からは、移民による負の側面と、今の日本は成長のチャンスであるという経済的な側面から見た、移民反対派の考えがよくわかるだろう。

誰が日本の労働力を支えるのか?

【著者】野村総合研究所 寺田知太・上田恵陶奈・岸浩稔・森井愛子
【発行所】東洋経済新報社

野村総研の分析によって、日本の労働力減少、外国人労働者はそれを代替できるのか?、人工知能(AI)はそれを代替できるのか? を定量的なデータに基づいて予測している。

本書によると、今後日本が外国人労働力を呼び込めるかどうかは、分析結果では海外との厳しい労働者争奪戦に勝てるのかどうか怪しく、対策をとるなら今しかない、としている。

また分析では、2030年の日本の未来を「小売」「物流」「ヘルスケア」の3分野でシミュレーションしている。

分析によれば、社会が望むと望まざるにかかわらず、デジタル労働力(機械)は登場し、あなたのそばで働くだろうと述べている。逆に人間でなければできない仕事と、機械による仕事とどのように共存していくべきかについても言及している。

ルポ ニッポン絶望工場

【著者】出井康博
【発行所】講談社

日本で現在急増している外国人労働者。そのうちの技能実習生と留学生、日系ブラジル人などに焦点を当てて、既に外国人労働者なしでは成り立っていない産業構造や、彼らを食い物にしている留学生ビジネスや技能実習生制度の実態を暴いている。

また、年々外国人労働者が日本を選ぶ魅力が薄れていること、既に日本への出稼ぎをやめつつある中国人や日系ブラジル人、犯罪に走らざるを得ない外国人労働者の現状を指摘し、相変わらず戦略の無い日本の移民政策に対して警鐘を鳴らしている。

本書では、「労働力」として受け入れられている外国人の実態について理解することができるだろう。

市民が提案するこれからの移民政策

【編著者】吉成勝男・水上徹男・野呂芳明
【発行所】現代人文社

本書は、NPO法人APFS(Asian People’s Friendship Society)の30年以上に渡る、外国人移民に対する活動実績をベースとして、これからの日本の移民政策がどうあるべきかを述べている。

また、APFSの活動実績に基づき、外国人労働者支援活動の具体例や制度・政策的な課題を示し、さらには入管収容施設のありかた、移民に対する社会福祉制度の課題について論じている。

そして、日本以外の海外各国(米、ブラジル、フランス、中国、韓国、フィリピン、オーストラリア)の移民政策(送り出し国あるいは受け入れ国として)の動向を詳細に取り上げている。

やや専門的なので初心者には難しいかもしれないが、私が所属するAPFSの活動の紹介もあるため、興味があれば是非ご一読いただきたい。

難民からまなぶ世界と日本

【著者】山村淳平
【発行所】解放出版社

1990年代に海外で難民に対する医療支援、2000年から日本で移民・難民に対する医療に携わっている内科医である筆者が、海外及び日本の「難民」について、また日本の難民申請の現状と不認定難民が置かれる処遇、収容所の問題などについて、平易な文章で分かりやすく伝える。

本書は、日本にいる難民申請者や非正規滞在者の人権はどうあるべきか、また日本の難民認定制度・難民政策はどうあるべきか、また日本人が持っている「難民」感はどこから来ているのか?などについて考えさせられる1冊です。

患者さまは外国人

【原案】山本ルミ 【漫画】世鳥アスカ

【発行所】阪急コミュニケーションズ

六本木に数年前まであった在住外国人や来日する外国人のための診療所「インターナショナルクリニック」
そこで60年近く医療活動された「無国籍ドクター」アクショーノフ氏と、ドクターとともに約20年間勤務された「空飛ぶナース」山本ルミ氏のもとには
日本に住む外国人だけではなく、海外から来る超有名歌手など様々だったようだ。
それだけ外国人の間で有名な存在だったのだろう。
パスポートの無い人や不法滞在であっても治療優先、お金のない人からは治療費を取らない、そんな人間的な医師が世の中にいたんだと驚きました。
外国人向けの診療所ならではのビックリ・面白い実体験をマンガで面白おかしく伝えてくれます。

まんが クラスメイトは外国人

【著者】「外国につながる子どもたちの物語」編集委員会
【発行所】明石書店

親のどちらか、または両親が外国人である子どもたちが日本で生活するうえで抱える諸問題について、まんがで親しみやすく、それでいて、子供たちの親の出身国や日本に移り住んだ時期などにより、様々な典型的なモデルケースを取り上げて解説しており、理解しやすい。

普段あまり光が当たらない、「外国にルーツを持つ子どもたち」の問題について、当事者世代である中高生だけでなく、大人でも十分学びとることができるだろう。移民を受け入れることは、本人だけでなく、子の世代にも様々な問題を引き起こすことになる。そしてそれは、我々日本人たちの協力なくしては解決しないことを、私たちも知っておくべきだと思う。